個人情報保護法における解釈について

個人情報保護法における解釈について

◯事案の概要

個人情報保護法30条2項の「額の費用を要する場合その他の利用停止等又は第三者への提供の停止を行うことが困難な場合」について具体的解釈や例示などがあるか

◯相談内容

個人情報保護法30条の利用停止の中で、2項に

「ただし、当該保有個人データの利用停止等又は第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合その他の利用停止等又は第三者への提供の停止を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。」

とあるのですが、「額の費用を要する場合その他の利用停止等又は第三者への提供の停止を行うことが困難な場合」の具体的解釈や例示などはありますか?

通常はwebサイトの掲載に同意を取得している会社なのですが、同意取得漏れの社員から退職後にwebサイトからの写真削除の要求を受けており、期限を今月中と指定されております。

削除には当然応じる方針のようですが、コストと手間も生じるため、上記条文が想定する程度に、何か参考となるものがあるのか、単純に裁判例等を追うことになるのか、ご教示いただきたいです。

◯菰田弁護士の回答

当該保有個人データの利用停止等又は第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合その他の利用停止等又は第三者への提供の停止を行うことが困難な場合
この文言に関して、明確な物差しは存在しません。

裁判所も「多額か否か、困難か否かは、当該個人情報保有者(会社)の資金力、当該掲載物の周知の程度等、諸般の事情を総合考慮した上で、個人情報保有者が利用停止等を行うことで被る損害と当該個人が被る損害を比較衡量して決しなくてはならない。」と、曖昧な物差しを提示しています。

ただ、結局は憲法で認められている人権としての肖像権侵害を社会的に許容しないといけない程度に会社側に損害が発生する場合になります。

Webサイトから写真を削除して他の写真に入れ替える作業は、確かに面倒ではありますが、手間もコストも会社の経営基盤を揺るがすようなレベルではないはずですから、Webサイトの従業員写真でこの条文を使えるケースは想定しにくいですね。

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