特別対談Part.1 山川浩正さん×菰田泰隆弁護士×横須賀輝尚

特別対談Part.1 山川浩正さん×菰田泰隆弁護士×横須賀輝尚

「技術を極める」

横須賀:まずは、「技術を極める」ということについて伺います。技術という言葉にどういったイメージをお持ちですか?

山川:僕は24 歳の時にTHE BOOMというバンドでデビューしました。そこから30年近くたちますが、技術は磨いていかないと、という気持ちは今も常に持っています。

アルバムが完成したり、いいライブをやったりしたときの達成感みたいなものは、実はいまだにそんなにないんです。その時は「やったな」と思っても、次にもっといいものを作るために向上していかなきゃいけない。これで大丈夫かなという心配みたいなものは常にあります。

横須賀:菰田さんはいかがですか?

菰田:僕たちの場合は司法試験がそれなりの難関なので、合格したことが、弁護士として一人前の能力を持つという証にはなります。ただ、仕事をし始めてから、法的な知識やノウハウ以外のところは何も持ってないことを実感しました。

横須賀:そこを高めていくのは大変だと思いますが、技術を高めるためにどんなことをされたのでしょうか?

菰田:僕は弁護士以外の人を真似してきました。経営者など、誰かしらすごいと思う人がいたら、とにかくその人と頻繁に会食します。そしてその人の立ち振る舞いや従業員に対する感覚などを徹底的に聞いていく、というのを繰り返しています。

山川:僕は、プロになってからスクールに入りました。逆に僕らはプロになるための試験があるわけではない。知らなければいけない音楽理論や知識はありますが、何の知識もなくても、良ければ売れてプロになれてしまう。

ただ、長くやっていくと、自分に足りない知識があることに気がついて、知識を学ぶ必要性を徐々に感じはじめます。そこでプロになった後でスクールにいく人は多いです。行くことに抵抗はなかったですね。もっと知りたい、もっと学びたいと思いました。

「売れない」ミュージシャンや「食えない」弁護士には何が足りないのか

山川:どこかで有名になりたいとか、女の子にモテたいとか、邪念がいろいろ入ってきますが、この道に限ったことではなく、「何かになろう」と固執した段階でうまくいかないのでは。その人の本質に合った道というのがそれぞれに絶対にある。そこを見つけられるかどうかも大事です。

僕はたまたまミュージシャンになりましたが、プロというところには固執しませんでした。楽器とリズムを刻むことが面白くて、もっとうまくなりたいと純粋に思っていた。そしてその延長線上にプロがあった。

プロになってからも、それ以外のことは考えていないですね。プロになりたいという気持ちがものすごく強いか、純粋にプロアマ問わず好きな音楽をやると割りきれるのなら、うまくいくと思います。

横須賀:それはすごく面白い。ビジネスにも共通しています。

菰田:とても似ています。面白いと思えるかどうかというか、好奇心の部分だと思います。法律は、トラブルが起こらないように決めた社会のルールです。法律ありきではなく、ツールでしかない。ですから、法律を道具としてちゃんと使って、人のために何ができるのかを突きつめて考えられる人は、弁護士としてすごく伸びている感じがします。

行き詰まりや煮詰まりをどう打破していったのか

横須賀:これまでに行き詰まりや煮詰まりを感じたことはありますか?

山川:そもそも煮詰まらないようにしますね。ある程度までいくと、自分の得意なものが見えてきます。そこで「これは俺じゃなくていいな」というのがわかってくると、そこは捨てていいと思います。全部をやろうとしない。

たとえば、ロックミュージシャンって、だいたいみんなジャズミュージシャンに対してコンプレックスがあるんです。ジャズってすごく難しくて、小さい頃からの積み重ねがないと演奏できないんです。でもそれをコンプレックスと捉えるか、「そこは俺の世界じゃない」と捉えるか。自分の進む道をある程度決めたら、そこを伸ばしていって、煮詰まりそうな分野は削っていく。

菰田:僕は定期的に煮詰まります。経営的にも気持ち的にも。最近少しわかってきたんですが、人に会っていない時期が行き詰まりますね。

作業ははかどるので、自分では頑張ってる気持ちになるんですが、如実に法人の売り上げが止まるんです。人に会ってない時期と少しずれて、売り上げが驚くほど下がります。

横須賀:弁護士としての仕事はこなしていても、それを超えることができていないと伸びていかないので、仕事として行き詰まりを感じると。多分普通の人より高いところの苦しみだと思いますが。

菰田:新しいものを何も取り入れられていないので、新しいものが何も生み出せてなくて行き詰まっているんでしょうね。その場で足踏みしているような感覚になります。

特別対談Part.2 山川浩正さん×菰田泰隆弁護士×横須賀輝尚に続く