労組との団体交渉による「休日の新規急患入院受入れを2人に制限」を撤廃・緩和することは団体交渉事項にあたるか

労組との団体交渉による「休日の新規急患入院受入れを2人に制限」を撤廃・緩和することは団体交渉事項にあたるか

2021年5月30日

◯事案の概要

「休日の新規急患入院受入れを2人に制限」を撤廃ないし緩和するという経営上の施策の変更は団体交渉事項にあたるか

◯相談内容

総合病院で看護師の労組との過去の団体交渉の経緯から、休日の新規急患入院受入れを2人に制限するという暗黙のルールが成立している法人があります。

この度のコロナ禍の影響により病院収益が悪化し、休日であっても新規受け入れの枠を増やしたいという意向があります。

過去の経緯として、団交事項として取り上げられていた事実はあるものの、新規受け入れ人数の増加により労働条件は変化せず、時間外労働は若干増える可能性があり、かつ休日の人員数に比して労働密度が濃くなることはあり得る程度です。

従業員の待遇ないし労働条件に密接に関連性を有する事項は団交の対象となりえるとの高裁判例もありますが、本件の「休日の新規急患入院受入れを2人に制限」を撤廃ないし緩和するという経営上の施策の変更は、団体交渉事項にあたるでしょうか。

◯菰田弁護士の回答

今回の話は団体交渉事項には該当しないと思いますよ。確かに先生の挙げられているような裁判例もあるところではございますが、やはりあくまで団体交渉とは労働者の労働条件について交渉する場です。

病院が新規患者の受け入れをどの程度にするかは病院の理事会で決める経営判断になりますので、そこでマンパワーが足りないのであれば採用して人を補充すれば良いですし、シフトの組み方を考え直せば良いですし、必ずしも新規患者の受け入れ人数が増えたからといって労働者の労働条件が悪化するような関係性にはありません。

以上の通りですので、今回のケースは団体交渉事項ではなく、労働組合と協議する必要性のない事柄だと思います。

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