賃借人が物件を汚れ放題で放置して出て行った

賃借人が物件を汚れ放題で放置して出て行った

◯事案の概要

共有物件の賃借人が、賃料を滞納し、契約解除の連絡もなく退去した。残置物あり、屋内は床が腐るなどひどい状態だったが、廃棄物処理法16条・25条及び刑法261条の建造物等損壊罪、262条の器物損壊罪は成立するか

◯相談内容

共有物件をAに賃貸した。しかしAは賃料を滞納し、契約の解除の連絡もせず、3か月以上前に当該物件を鍵もかけず出て行った。残置物があり、カギは中に置きっぱなしで扉は開けっ放し。中は雨風にさらされて劣化し、ごみから出た腐った汚水などで床が腐っていた。

動物を放し飼いにしていたようで排泄がそのままになっており、畳はひどい悪臭がした。汚れ放題のごみ屋敷状態で、屋内はかなりひどい状態だった。

上記のAの行為又は不作為につき、廃棄物処理法16条・25条及び刑法261条の建造物等損壊罪、262条の器物損壊罪は成立するでしょうか?

私は法律の構成要件に該当し上記の罪が成立すると考えたのですが、警察は家の中のことだし民事で解決してくれ、そもそもそんな人と契約したあなたが悪いと言って被害届を受け付けてくれなかったそうです。先生の見解をお教えください。

また、本人だけでなく弁護士等も付き添えば、通常は被害届や告訴状受理される案件でしょうか?

◯菰田弁護士の回答

形式論だけ言うと、廃棄物処理法違反の不法投棄となります。ただ、廃棄物処理法が通常想定している不法投棄ではなく、賃貸物件における残置物の放置という側面ですので、前提として一定の契約関係が存在する以上は、廃棄物処理法という公法ではなく、民法という私法で解決してくださいと警察が言うでしょうね。

ここは夫婦喧嘩や友達同士の喧嘩に関してどこまで警察が首を突っ込むかという話と同じであり、一定程度警察に行政裁量が認められていますので、摘発させるのは難しいかと思います。

刑法261条の建造物等損壊罪と言えるためには、建造物自体が損壊されていなくてはなりません。つまり、建造物から取り外しできないものが壊れている必要があります。畳は取り外しが可能なので建造物の一部とは認められず、床は一部と認められるでしょう。

ただ、器物損壊罪と同じく故意犯しか処罰されませんので、故意があったかどうかが問題となります。この居住者が家を出て行くときに建造物を損壊するために様々なものを放置していったかどうかの主観面が問題になりますので、ちょっと立証が難しい話になるでしょうね。

262条の器物損壊罪は、建造物等損壊罪と同じように、故意の部分でハードルにぶつかると思います。

結局、賃貸借契約終了時の明け渡しに関するトラブルであって、前提としては民法上の問題がメインです。そのため、警察としては警報の話にもっていくのはかなり消極的な事案でしょうね。

また、主観面がかなり問題になるので立証が困難であり、警察としても立件するまでのイメージがわかないと思います。現実的には刑事事件化させるのは難しく、民法上の問題として現状回復義務や損害賠償の話に持ち込むべき事案だと思います。

◯その後の相談内容

ありがとうございます。

相手方の資産が厳しいので、民事で解決するのが難しそうです。刑事として受理されて、「取り下げてほしければ即刻その方や家族が損害賠償などを払え」というような示談が成立すればと考えたのですが、こちらも厳しそうですね。

◯菰田弁護士の回答

刑事事件は難しいでしょうね。

連帯保証人に対する請求や家賃保証会社からの代位弁済などでリスクヘッジをするしかないでしょうね。

※本サイトに掲載された相談事例は、実際に会員様から寄せられたご相談について回答したものを簡略化して掲載しております。
ご入会されると、毎月のニュースレターでより詳しい解説をご覧いただくことが可能です。