◯事案の概要
従業員の債務の弁済に関して、裁判所から会社へ差し押さえの書類が来た。ただ本人がその書類を隠してしまい退職の手続きを進めてしまったため、全額支払うには給料からでは足りない
◯相談内容
顧問先の従業員の話なのですが、離婚をして相手に支払うべきものを支払っていなかったようで、裁判所から会社へ差し押さえの書類が来て、給料から支払うように命じられたようです。
しかし本人がその書類を隠し持って行ってしまい、会社が知ったのが期日からかなり経ってからでした。相手から弁護士から連絡があり、給料から支払えと求められたようです。
ただその従業員が今月末に退職予定で、全額支払うには給料からでは足りないとのこと。弁護士からは「従業員と話し合って会社から払え」と言われているようで、会社が困っています。
そこで質問です。
①給料から天引きできるものすべてをこのようなケースで天引きしてしまって良いのでしょうか?
②退職後に、支払っていない差額を会社が本人と話し合って支払う義務があるのでしょうか?
◯菰田弁護士の回答
給与差押えは会社への送達によって効力が生じますので、本人が隠し持っていたとしても会社に送達されている以上は、差押命令として効力が生じております。
ですので、送達後に支払われたお給料に関しては、本来は差し押さえられているはずのものであって本人に支払われてはならないものです。もちろん、差し押さえ可能な範囲だけの話ですが。
そのため、本来は差押えの効力が発生していて債権者に支払われるべきだった部分に関しては、債権者が会社に対して請求することが可能となります。
①について
会社から本人に対する一方的な天引きは労基法上許されておらず、あくまで差押えの効力が発生している部分のみになります。そのため、それを超える部分は本人の了解のもとで天引きするしかありませんね。
②について
上記の通り、会社が債権者に対して支払う義務がある部分に関しては支払わなくてはなりません。
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