持株会により株を保有する社員が退職時に株を売買することは問題があるか

◯事案の概要

持株会により株を保有している社員が退職時に他の特定社員に売買した。その後、この売買に関して株を保有する創業者からクレームが入った

◯相談内容

社員の持株会により会社の株を保有している社員が退職し、その保有株を他の特定社員に売買するにあたり、取締役会を経て特定の有能な人材に配当還元価格(持株会のルールに従い)で販売しました。

その後、質問状という形で、創業者であり現在10%の株を保有する者よりクレームが現社長へ来ました。この創業者が持株会の幹事に30%入っているとのことです。(非上場です)

社員持株会の社員の退職後の株の売先について、

①創業者の同意がいるものでしょうか(株主総会審議でしょうか)?
②また特定の有能な社員に対して売却するのは問題ありますでしょうか?

◯菰田弁護士の回答

まず、退職する従業員から特定の有能な従業員に対して直接売買ということはしていないと思います。

法的な構成としては、退職する従業員から持株会が強制的に株式を取得するという強制取得条項が設けられており、これに基づいて持株会が買い上げているのでしょう。その上で、持株会から特定の従業員に対して株式を付与しているものと思われます。

持株会が強制的に買い上げることは、そのような規約が存在すれば特段問題ありません。そして、持株会から誰に株式を取得させるかは持株会の意思決定となります。

持株会は民法上の組合であるケースがほとんどでしょうから、組合の意思決定方法となりますが、おそらく持株会に規約が存在するのだと思います。ここで持株会の意思決定方法がどのように定められているか確認してください。

組合員の過半数という定めのケースや、持分の過半数というケースもあると思います。(創業者が30%持っているというのは、この組合の持分でしょう。)

これらの意思決定方法に従って、特定の従業員に株式が付与されているのだとすれば、それが創業者の意向に反しようが構いません。規約次第だと思いますので、確認をお勧めします。

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